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【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」⑦森町役場・山形さん~自作システムが役場に採用された「行政アーティスト」~

【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」⑦森町役場・山形さん~自作システムが役場に採用された「行政アーティスト」~

えぞ財団 2021年4月15日

えぞ財団の「この人、エーゾ!」第7弾。組織のなかで、マチのなかで、もがきながらも新たなチャレンジをしている人を紹介します。今回ご紹介するのは、森町役場で活躍する「行政アーティスト」の山形巧哉さん。 幼少期から森町で生まれ育ち、地域活動やデザインといった多方面で活躍。そして現在は森町でデジタルテクノロジーの活用を推進しています。 山形巧哉(やまがたたくや):森町役場ICT担当。1979年、森町出身。妻と二人暮らし。趣味は思いついたことを手当たり次第やることと、やり尽くしたら飽きること。

山形巧哉(やまがたたくや)Profile

”行政アーティスト”!? 耳慣れないこの「肩書」が如実に表す山形さんとは


山形さんが複数持つ肩書きのうちのひとつ、”行政アーティスト”。
行政×アーティスト…一般的にはなかなか結びつかないこのワードは、公務員ながらもデザインなどを手がける山形さんを如実に表しています。
「以前芸術祭に呼ばれるチャンスがあった時に名乗ったのが始まりです。芸術祭に役場の職員を呼ぶのって変な感じがするじゃないですか。そんなときに、友人から「山形さんはアーティストっぽいから、行政アーティストって名乗ったら?」と言われたのがスタートで、それがそのまま定着した形です」。

現在は、町内の友人たちと行う”モリラボ(森町IoT・ICT推進ラボ)”の活動がメインだという山形さん。
“ものづくり”を起点にして、自分たちで何かを作り、その仕組みを知る。そして自分たちでそれを伝えたり、選択したりできるようになる。そんな考えのもと、地域の子ども達にITのことを伝えたり、大人向けの勉強会を開催するといった活動も行っています。


過去と現在をつなぐ”古写真のアーカイブ活動”の取り組み


山形さんが継続的に取り組んでいる活動の一つに、”記録の記憶”という古写真のアーカイブ活動があります。
「僕は『時層写真』と呼んでいますが、いわゆるフォトインフォトのような形で、古写真を地域の方からもらったりして、それが撮影された場所に行き、現在の風景を重ね合わせて写真を撮っています」


これは「ハウモリ」という名前で活動している取り組みで、去年までは立正大学の学生が加わっていたなど、ハウモリを面白いと感じる人と一緒に活動を行っているそうです。
「自分自身が面白いと思って始めたことに、共感してくれる人が出てくるのは嬉しいですね」と山形さん。


この活動を始める以前には、ウィキペディアタウンという”自分たちの町のことをウィキペディアに書き残していこう”という取り組んでおり、地域アーカイブに面白さを見出すきっかけはこのウィキペディアタウンにあったと言います。

「記録を残したい」そのキッカケはおばあちゃんの認知症


「記録を残したい」と強く思うようになったのは、実はおばあちゃんが認知症になってしまったことがキッカケ。おばあちゃん子だった山形さんには、ばあちゃんとの思い出がなくなってしまう寂しさがありました。
「そんな時に、たまたま知り合った人がウィキペディアタウンを教えてくれたんです」。
ウィキペディアタウンは、地域にある様々な情報をウィキペディアに記事として掲載する取り組み。森町は歴史資産に恵まれた町なのに、当時のウィキペディアには情報が少なく“おばあちゃんからも聞いていた森町の歴史を、記録として残したい”と強く感じて、動き出します。

ウィキペディアタウンの取り組みを開始すると、次第にいろんな人や沢山の情報が集まってきました。それらの情報を年代別に整理し、年表のような形式にまとめたものをコンテストに出したところ、なんと最優秀賞に輝いたのです。
山形さんは「今にして思えば、ウィキペディアタウンの活動が起点となって、いろんなことに繋がっています」と当時を振り返ります。


「なんとなく得意そう」でIT担当に。役場内では異例の17年”異動無し”



森町役場でさまざまなITサービスを生み出している山形さんですが、入庁したての頃は町営住宅や土地の管理業務をしていました。
「2002年に役場の中に情報担当ができることになって、当時一番若く『なんとなく得意そう』という理由で僕が選ばれたんです(笑)」。そこから情報担当になり、17年以上。通常3~4年で異動がある役場においては、異例の長さです。

当初はわからないことだらけのなか、とあるベンダーにシステムをイチから教えてもらうなど、周囲のサポートを得てプロジェクトが進み出します。
当時森町には潤沢な予算があるわけではないので、新しいシステムを導入することは難しいという課題がありました。その際、ベンダーから「山形くんが本気で覚える気があるなら、本気で教えるから自分で作ってみなよ」という提案を受けます。
「それからLinuxと呼ばれるサーバー用のOSなどを学んで、技術を磨いていきました。試行錯誤しながら、技術を身に付けていった感じですね」。


森町役場はクレイジー!?素人の自作システムを町に導入。周囲の理解も後押し


「素人の僕が組んだシステムを町として使ってくれるなんて普通、ありえないじゃないですか。それを信じてくれて使ってくれる。一番クレイジーなのは当時の上司や森町役場かもしれません(笑)」。
システムを自作して「できちゃいました」と言えばそのまま採用される…当時はそんな環境でした。
今で言う、DIYが当たり前。パソコンの電源コネクタをはんだ付けで修理したり、LANケーブルも自作していたそうです。ある時は役場のノートPCの液晶が壊れ修理に出すと5~6万円かかるところ、自分たちで修理してみたら1本800円の蛍光管を交換するだけだった、なんてエピソードも!
「もしトラブルがあっても『あいつらが作ってるからしゃあないよね』と周囲も非常に理解してくれました。初めてのことばかりでしたが、多くのことを任せてもらいましたね」と山形さん。
何かをしくじっても、自分たちの作ったものだから自分たちで直せば良い。そんな周囲の環境がその後に大きく影響します。


これまでで一番大きな失敗は?パソコン数百台がシャットダウン


一番大きな失敗は、ここでは言えないレベルのものです(笑)」。“やらかした!”という経験の一つに、役場職員のパソコン(シンクライアント)200~300台が、不定期に一斉にシャットダウンされるという現象を数ヶ月間引き起こしてしまったというエピソードがあります。
原因を特定するまでの2ヶ月間、断続的にPCが落ちる現象が続き、ストレスで声が出なくなったと思ったら、なんと胃を壊していたのだそう。

森町は全国の行政に先駆けて、2012年にマイクロソフトのクラウドサービスを役場に全面的に導入。当時は黎明期で、アーリーアダプターとして安価に導入できたのもメリットでした。
2012年に導入して、2013年から本格的に稼働を開始。そんな中で、職員のPCが一斉に落ちる現象が断続的に発生するようになってしまったのです。当初は原因が不明で、1つずつ条件を変えてPCが落ちるかどうかを試すという地道な作業をすることになりました。
すると、特定のプリンターで特定の条件で印刷したら落ちることが判明。「このことをマイクロソフトに報告したら、『このエラーをよく見つけてくれた』と言われました(笑)新しいものが好きすぎて、見つかっていないエラーを引き出すのが得意かもしれません」。


新しいことを始めるのに不安は?「できることならすぐに始めたらよい」


「不安しかないです。けれど、不安がなかったら楽しくないですよね。ドキドキしながらやるのが、スリルがあって好きなのかもしれないです。ただ1つだけ言えるのは、変な自信があることですね」。
そんな山形さんは、トラブルがあっても“なんとかなるだろう、きっとなんとかなる”と考えているといいます。
「新しいことを始めて壁に直面しても、最終的にはなんとかなるという感覚です。少なくとも今までなんとかならないことは無かったから、できることならすぐに始めたら良い。そこで躊躇していることに意味はないですから」。

面白いと思ったら次の日にはすぐ始めてることが多く、色々な方から「よくやるね」と言われることも。
これまでに沢山のプロダクトがあるものの、今現在も残っているものは多くはないそう。しかし山形さん自身は、それで良いと考えています。


様々なことにチャレンジする山形さんに聞く、”周囲を巻き込み、説得するコツ”は?



自治体に限らず、企業においても新しいシステムを導入したり、ICTの環境を整えるときにはコストとリスクの問題が出てきます。それに加えて、みんながシステムに期待するのは「今まで通り使えること」。何かを変えようとすると抵抗勢力が必ず出てきます。
「ここは論理的に考える必要があります。そもそも、誰がこれからのシステムを使っていくのかという視点が重要です。例えば、2013年にスマホ世代40%、非スマホ世代60%だった比率が、5年後には逆転しますよ、というエビデンスを上司に報告してプロジェクトを進めたこともあります。きちんとエビデンスを提示しながら説明することで、新しいものを導入することに対する不安感を取り除きました

また、会議室の予約システムを変えようとしたときに、上層部から反対の声があがったことも。そこで山形さんが決裁者に「最近、予約システムを使っていますか?」と聞くと、使っていないという返答が…
「実際の予約業務は若手が行なっているからなんですね。でも、上層部も理由なく反対しているのでは無く、自分が事務を処理していた時の手法が最善だと思っているから反対している。しかし、処理をしている若手にとっては、それは不便なこともある」。“若い人の為になるシステムを導入しましょう”と、周囲を説得していったと話します。

「役所の人間には謎の根性論というか、人件費をコストとして考えられない傾向があります。作業量を人件費として換算するのが不得意なんですよ。例えば、通知の封入や書類のホチキス留めなどの単純作業を、高いコストの職員で回すことに疑問を持たなかったりするんですね」。
IT化を進めるうえでは、最終的にこの人の作業時間はこれくらい減って、コストはこれくらい減って、森町としてこれくらいコスト削減になりますよ、と具体的に数字を出すことを心がけているそうです。


「役場の仕事は、なまら楽しい」役場の仕事のやりがいは?


「役場の仕事は、なまら楽しいですね。公務員の仕事というのは波があるし、トラブルもあります。でも、こんなに人の生活を間近で見られて、ときには感謝されちゃったりして。こんなに自分が生まれ育った町のことを手がけられるって、幸せなことなんじゃないかなと思っています」。

新聞やWEBで山形さんの活動が取り上げられた際には、それを見たご両親がハイテンションで電話をかけてきたり、奥さんもとても喜んでくれるそう。「『私は最初から信じていたよ』って言われるんです(笑)。それらが原動力になっていますね。僕の根底には、奥さんや家族にも褒められたいという欲求があるのかもしれません」。


今後は”頑張らないことを頑張りたい”山形さんが見据える今後とは


今後は、“頑張らないことを頑張りたい”と話す山形さん。
「もっとゆるく、肩の力抜きなよって言いたくなるときもあるじゃないですか。まあ、座りなよ。みたいな。そういう世界をつくっていきたいですね。みんなでお茶飲みたいですよね。
コロナが明けたらみんなで飲もうぜでもいいんですけど、人それぞれがやりたい方向で物事をやっていけばいいんじゃないかな、と最近感じています。もう良くないですか、デジタルとかITとか(笑)。生きてりゃいいじゃんって思いますよ。最近つくづく、優しい世界って大事だなと思います」。
白黒ばっかりで世知辛い昨今、自分の気持ちと相手の気持ちが異なるなかで、妥協点を見出してみんなでグレーを楽しむ世界を作りたい。
行政にIT、デザインなど多様な経験を掛け合わせて多様な取り組みを行う山形さん。「好きなこと」に向き合う山形さんは、自然と多くの人を惹き寄せながら、新しいことを試し続けています。

photo by: Keisuke Harada
https://twitter.com/idenxtity0911?




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